株式会社マルカ

PROJECT STORY
プロジェクトストーリー

入社1年目、
約2億円案件の
メインをはる。

A.M

東京産業機械第二部 第三課
経済学部 経済学科 卒業
2018年入社

若手を信じ任せた
海外プロジェクト

海外24拠点のグローバルネットワークを持つマルカは、国内外に製造拠点を持つ日本企業や海外現地企業の希望に応え、国内で製造した各種産業機械を海外向けに販売することも多い。しかし、入社1年目の社員に約2億円規模の生産設備の海外案件を任せるとはなかなかの大冒険ではないのだろうか。今回は現在入社4年目のAさんにスポットを当て、世界中が新型コロナウイルス感染症拡大の危機に見舞われるなかも、全力で走り抜け成長していった2年間のプロジェクトの軌跡を追った。

SECTION.01

入社1年目の夏。
知識ゼロから
必死のスタート

「これと、ここのお客さんも任せるからね。ここ今、新しい話があるからやってみて」
入社1年目、東京産業機械第二部に配属され、とある関東のユーザーの担当となったA。自動車産業が非常に盛んな日本で、マルカには完成車メーカーから関連企業まで多数の取引先がある。2018年夏、Aが上司から引き継いだ1社で既にそのプロジェクトは動き始めていた。
ユーザー(=顧客。以下ユーザーと表記)は当時、タイ拠点が急拡大している自動車部品メーカー。プレス事業を始め様々な事業を行う会社で、タイ工場でのプレス機械の導入を検討していた。その生産設備のプロデュースを既に国内工場で実績のあるマルカに打診頂いた。
しかし、Aはその年の春に入社したばかり。文系出身のAにはまず「プレスとは?」の基礎知識から不足しており、製造する自動車の部品の名前を聞いても全くピンとこない。
「これは大抜擢?と嬉しい気持ちと、右も左もわからないプレッシャーとで戸惑いもありました。ただ、海外の仕事がやりたくて入社したマルカ。こんなに早くチャンスが来るなんて!とやはり嬉しかったです」。

ユーザーに同行し仕入先のプレスメーカーの見学に行けば、ユーザーより自分自身が学ぶような状況。逆にユーザーから教わることの方が多かった。それでも、知らないことを隠さず、「それってなんですか?」と誰にでも素直に質問できるAに対して、ユーザーの方々も、温かく色々なアドバイスをくれた。
「分からないことは社内の上司・先輩・仕入先にとことん聞いて勉強する毎日でした。図面を見ても、ちんぷんかんぷんで。より実物を見た方がイメージしやすいため、YouTubeで見つけた製造業のプレス加工の動画を何度も見て学びました」。
1年目のAは必死に食らいついていった。

SECTION.02

驚愕の2億円
プロジェクト。
全身に緊張が走る

ユーザーは日系大手自動車メーカーに部品を供給するサプライヤーで、今回のプロジェクトは、タイ工場にプレス加工の生産ラインを導入するという設備投資プロジェクトだった。最大のテーマはロボットを使った省人化。
2018年秋から本格検討が始まった。
日本で製造した機械を現地に運び、据付する流れは当初より決定しており、ユーザー、仕入先メーカー、マルカそれぞれの日本とタイ両拠点で連携を取り、進めていくプロジェクトである。
Aの役割は、日本側におけるプロジェクトのハンドリング。仕入先メーカーへの交渉、設備仕様の決定、日本側ユーザー担当者の対応まで全てをこなす必要があった。

上司からは「まず一度自分で考えてみて、分からない事があれば一緒に考えよう」と、Aの主体性を尊重しながら見守りつつ、要所要所で助け舟を出すスタンスだった。
調べても過去に類似の事例もなく、Aは恐る恐るまず概算で見積を出すと、軽く億単位を超えることがわかる。
最初はそのあたりの相場感覚もなく、思わず緊張が走ったという。
「まさに、『えっ?こんなにするのか!』と。上司に確認をとると概ねOKでホッとしましたが、金額を知って余計に責任重大だという意識が高まりました」。

最終的な見積金額は約2億円。
見積の細かな数字は上司が入念にチェックしてくれた。客先からも指摘されるであろう「この数字はどうしてこうなったの?」という質問に対して根拠を説明できる知見を磨いた。さらに、仕入先メーカーにも「この数字になる根拠は?」と質問しながら価格交渉にも挑み、Aは確実に成長していった。

SECTION.03

初めての海外案件を
新型コロナウイルスが襲う

今回のプロジェクトの設備とは、複数のプレス機械を設置し、その工程を全て自動搬送し、鉄板に対して成形や穴あけを行う生産ライン。自動搬送装置がない場合、手作業で次工程につなぐ為、工数分だけ人手が必要となる。そういった課題を、最近の製造業のトレンドである省人化・自動化システムで解決を図る。
受注後の2019年、Aは上司から「現状把握のために、まずは現地へ行ってこい!」と背中を押され、一人でタイへ出張した。今回のプロジェクトは、マルカの現地法人であるマルカタイと一緒に進めており、ユーザー現地法人の社長に対して、設備仕様のヒアリング・調整まで終えている事を、今回の出張で確認できた。
仕入先メーカーはタイにも拠点を持っているものの、日本でのオーダーメイド製造のため納品時には日本から機械据付スタッフを派遣することで、計画も順調に進んでいた。

ところが、その予定は新型コロナウイルス感染拡大により一変する。
Aは2020年2月頃、2度目のタイ出張へ向かった。最終的に、ユーザー現地法人の社長に発注の承認をもらう一大イベントのためだ。
「この出張の最大のミッションである承認サインを頂いたときは、達成感でいっぱいでした。約2億円の契約です。承認を頂くまでは帰れない。最後の最後まで何があるかわからないと緊張感を持って臨みました」。

しかし、その喜びも束の間、2020年3月には世界中に新型コロナウイルス感染症が広がり、8月の納品時には機械据付スタッフもA自身もタイに全く入国できない事態となってしまった。
当初日本から仕入先メーカーの技術者を派遣する予定であったがかなわず、搬入後の設備対応を全て現地の仕入先メーカーとマルカタイに頼むしかない状況。
Aは現地から画像や動画を送ってもらい、無事に据付できたことは確認できたものの、立ち上げはやはり、なかなか上手くいかなかった。とくに要となる自動搬送部分のスピードが安定しない。「スピードが上がらないよ」と報告を受けても、ユーザーには「すみません」と謝罪し、仕入先メーカーには「なんとかしてください」と懇願するしか、Aにはできることがない。
自分が現地にいて見届けられない悔しさ、担当として責任を全うできないもどかしさ、無念さが残るプロジェクトとなってしまった。
「最後は、コロナ禍による状況もあり現地にいるマルカタイにほぼ全て任せる状態になってしまい、そこは悔しい想いでした。今回のプロジェクト経験を必ず次の案件に活かしていこうとも強く感じました」。

SECTION.04

大きな成長を糧に
次のステップへ

Aが日本国内で、若手ながらできる限りの対応をしたことは、ユーザータイ現地法人の方々からも評価のお言葉を頂けたという。
「結果的にタイ出張は2回しか行けませんでした。価格面などで厳しいリクエストもありましたが、『マルカさんはわざわざ日本から来てくれるんだね』と歓迎してくださいましたし、先方が日本に帰国されるときはマメに『中間報告させてください』と面談を重ね、安心して頂ける様努力しました。コロナ禍で設備しか到着できない状況でも、現地のユーザー、仕入先メーカー、マルカタイなどみなさんのご協力をいただき、最後は無事に設置・稼働まで乗り切れました」。

Aが入社3年目の夏に設備の導入を終え、2年がかりのプロジェクトは終了する。 現在ユーザーのタイ工場では当設備は日々稼働しており、Aの挑戦もひと区切りがついた。

今回、コロナ禍という自身がどう努力してもままならない事態を経験して、Aは世界の情勢や経済状況を日々チェックするようになり、情報収集を仕事に活かす習慣が身についた。
マルカの営業は仕入先メーカーとユーザーの架け橋となりつなぐ仕事。若く知識が乏しい面があったとしても、顧客を不安にさせない迅速な対応や密なコミュニケーションを心がけた結果、ユーザーから信頼されることに、年齢や経験は関係ないという自信もついた。
「同期や学生時代の友人には『海外出張、一人で行っちゃったよ。億単位のプロジェクトもやっちゃったよ。』って、ちょっとした自慢ですね(笑)」。
今回のプロジェクトを機に、ますます海外赴任への気持ちが高まったA。産業機械営業として大きく成長したAは、諦めない強い気持ちを武器に新たなチャレンジにも果敢に挑もうとしている。